転職の新たな展開
「先ほどお電話したときには、二次面接まで進んでいるから無理というふうにうかがいました。
駄目でも構いませんから、とにかく面接だけでも受けさせていただけないでしょうか」Fさんは、面接を受けることができました。
面接後に、求人企業の担当者から「履歴書を預かります。
もしも欠員が出ましたら、電話させてもらいます」といわれました。
そんな都合のいいことは起きないだろうと、頭を切り換えて次の企業を探そうとしていたときに、先方企業から電話がありました。
「すでに決まっていた方のなかのお一人が、通勤が大変だからという理由で、辞退されました。
もしいまでもお気持ちが変わらないようならば、ぜひお願いします」妻も賛成してくれたし、諦めずに粘った甲斐があったと担当コンサルタントも喜んでくれました。
こうしてFさんは、介護タクシーの運転手として、第二の人生をスタートすることになったのです。
すでに失業手当の給付は終わっていました。
品質管理の仕事から離れて一年。
Fさんはいま、介護を必要とする人たちを送迎する車のハンドルを握っています。
すべて予約制なので、前の日に予定表や利用者の身体の状態などを確認し、間違いのないように送り迎えするのが仕事です。
「ただ単に送り迎えをするだけではありません。
それなら普通のタクシーで十分ですからね。
利用者の方をベッドまでお連れしたり、着替えを手伝ったり、ベッドから起こしたり、ベッドから車椅子で車までお連れしたりとさまざまなお世話をさせていただきます。
必要があれば、病院での事務手続きなどもお手伝いします。
利用者の方と接しているときには、ケガや事故にあったりしないように細心の注意を払わなくてはなりません。
そういう意味で緊張感があります」それでも昔の職場と比べると疲労の質が違うといいます。
「以前の品質管理の仕事というのは、いい仕事、いい品物が出荷できて当たり前というところがありますよね。
そんなことでは誰も誉めてはくれません。
でもひとたび不良が発生すれば、どんなに一生懸命やっていても上からもお客様からも叩かれます。
いまやっている仕事は、一生懸命やればやっただけ利用者の方から感謝されます。
それが充実感につながります。
もちろん辛いときもありますが、決して次の日に持ち越すような辛さではありません。
そういう意味で健康的ですね」利用される方にとっていかに心地よい時間なり空間を提供するか。
そうしたことにも精一杯の気配りを忘れません。
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